Satoshi Haradaの日記

Satoshi HaradaがAgileに関することを書き残していく日記

Regional Scrum Gathering℠ Tokyo 2024に参加&登壇してきました

2024/1/10-12の3日間にわたって行われた、日本国内では最大級のアジャイルスクラムのイベント「Regional Scrum Gathering℠ Tokyo 2024(略してRSGT2024)」に参加&登壇してきました。

2024.scrumgatheringtokyo.org

 

参加レポートは既に多くの方が書かれていますので、私は去年のRSGT2023からどのような個人的変化があったのか・どのような気づきがあったのかを主軸に書こうと思います。

RSGT2023の参加レポートブログ

agile.hatenadiary.com

RSGT2023年の自分の参加レポートブログを読み返していたのですが、このときは野中先生のSECIモデルを引き合いに、暗黙知形式知の変換や場の醸成によって学習が起きていると整理していました。

この整理は自分の中で今も変わりなく、RSGTは知識創造が巻き起こるライブ会場だなと思っています。そして、そのライブが提供側・受け取り側という明確な区分けがされておらず、運営メンバー・スタッフメンバー・スピーカー・スポンサー・参加者といった役割の違いはあれど、場をみんなで作り上げているのがRSGTの特出しているところではないかと思うのです。

RSGT2023→2024で個人的に変化したこと

変化1.会社の同僚を連れていくことができた

同僚と書きましたが、実際は上長です(笑)

しかし、会社でアジャイルを広めていく仲間だと私は思っていますので、あえて「上長」ではなく「同僚」と書かせていただきました😁

RSGTには2020からこれまで5回続けて参加しているのですが、同じ会社の同じチームから同僚が参加してくれたのは今回が初めての体験でした。これが最高の体験で、イベント当日に盛り上がることができるのはもちろんなのですが、私がより価値を感じたのはイベントの後です。

RSGTの三日間が終わると、RSGT参加者はたいてい真っ赤に熱された状態になっています。社外のいろいろな先進事例を聞き、著名な方とお話しし、たくさんの勇気を持って帰ります。しかし、翌週の通常業務に戻ると一気に現実に引き戻されるのです。これが一人で参加していると辛い!あまりの温度差で自壊しそうなくらい(笑)

それが今回、同じチームの同僚と参加できたことで、RSGTが終わった翌週も(通常業務をしつつではありますが)RSGTで受けっとた熱量をお互いに熱交換しながら維持することができるのです。

具体的に言うと、感想交換会をしたり、さっそく同時視聴会を企画したり、「自分たちもさっそく像・死んだ魚・嘔吐をやってみよう!」と盛り上がったりするわけです。

いうなれば、「やっていき・のっていき」の「のっていき(フォロワー、二人目)」を一緒に連れて行って、翌週から「ドーン」している感じ。

speakerdeck.com

私はこれまで、RSGTの熱量を自分が持ち帰って、社内で自分が媒体として広めていかないといけないと考えていたのですが、もっと素晴らしい方法が見つかった気がします。自分が一人で頑張るのではなく、熱量が伝わりそうな人を連れて一緒に参加する。

自分にとって新たな発見でした。

変化2.ブラブラしていることを恐れない

RSGTに来るとみんな親しそうに「やあ!」「久しぶり!」「今どう?」とか話しているので、「自分も何か話さなきゃ!」って頑張りがちです。自分もこれまで4回参加しているのにそんな感じです。

でもこれ、そんなに頑張らなくてもいいんじゃないでしょうか?やっとそう思えるようになってきた気がします。

  • ずーっとセッションを梯子して見ていてもいいのです。
  • お昼を静かに一人で食べていてもいいのです。(自分はしゃべることと食べることを両立するのがそんなに得意ではないので、一人で食べるのはそれはそれで好き)
  • セッション見ないで、ずーっと誰かとおしゃべりしていてもいいのです。
  • ずっとホワイエ(スポンサーブースがある大広間)でブラブラしていてもいいのです。
  • なんなら、「ちょっと疲れたなー。一度退出してマックでコーヒー飲んでSNS見よう」でもいいのです。(自分はこれよくやります)

RSGTは「こう楽しみなさい」というルールは無いと思います(たぶん)。運営メンバー・スタッフメンバー・スピーカー・スポンサーといった人たちがそれぞれベストを尽くしている。そこに、参加者も各々無理のない範囲で関わっていけばいいのだと思います。

たくさん話したい!という人はそうすればいいし、一人で静かにメモを取りながらセッションをたくさん聞きたい!という人はそうすればいいのです。いろいろな人が集まって、いろいろな活動が行われているからこそ、あのRSGTの雰囲気や場が形成されているのではないかと、私は思うのです。

なので私は今年、積極的にブラブラしていたように思います。つまり無理に頑張らない。いま目の前で起きている事象をありのまま受け入れて、自分自身もありのままでいる。そんな感じに、今年からやっとなることができ始めた感じです。

RSGT2024での私の気づき

Regional Scrum Gathering℠ Tokyo is an annual Regional Gathering held in Tokyo, organized by a non profit organization "Scrum Tokyo". Our purpose is to provide a "Ba" (place) where practitioners share ideas among Scrum practitioners having great diversity.

RSGT2024の公式ページのAbout Usにも書かれており、RSGTのコンセプトとなっている文章です。

Regional Scrum Gathering℠ Tokyoは、NPO法人「Scrum Tokyo」が主催する、東京で毎年開催されるリージョナル・ギャザリングです。私たちの目的は、実践者が多様性に富んだスクラム実践者の間でアイデアを共有する「場」を提供することです。

実践者が多様性に富んだスクラム実践者の間でアイデアを共有する「場」を提供することがRSGTというイベントのコンセプトであり、目的・ゴールなのですね。

。。。って偉そうに言っていますが、運営のMihoさんに言われて私は今日このコンセプトを再認識しました(笑)

でも、RSGTの参加者は無意識のうちにこの「場(Ba)」を作ろうと自己組織的に動いているのではないかと思うのです。さきほどのブラブラしている話にもつながるのですが、それぞれの得意なことで無理せずいろいろな楽しみ方をしていていいと思うのです。

そのような様々な楽しみ方をする多様性に満ちた人たちが集まり、実践者がアイデアを共有している。まさにRSGTはそのような「場(Ba)」なのだと思いますし、自分もそのBaの一部を担うことができたこと・そして誰かに何かしらの影響を与えることができたことを嬉しく思うのです。

2024年明けましておめでとうございます

そして2024年です。(RSGT参加者の中では、年初一発目のイベントであるRSGTに参加しないと年が越せないという洒落がある)

RSGT2024でもたくさんの熱量・知見・勇気、そしてBaのパワーをもらうことができました。特に熱量。この熱量を燃料として燃やしながら2024年を走っていくことができそうです。

そして、次はそのBaを整える・形作る側にも興味がわいてきました。そのため、2024年からは「スクラムフェス神奈川」の運営メンバーの一人としてチャレンジをしてみたいと考えています。

www.scrumfestkanagawa.org

「参加したことがない→勇気をもって参加する→勇気をもって登壇する」ときましたので、いよいよ勇気をもって運営にもチャレンジしてみるときかなと。

2024年3月には、いよいよ本格的に会場を整えたりスポンサーを取ったりしてのイベント「スクラムフェス神奈川-春の陣-」が行われます。まずはここで、RSGTで受け取った熱量を燃やしつつ、新たな燃料を手に入れようと思います。

やるぞー!

焼肉レトロスペクティブ爆誕!遊び心を開放してチームの学習を飛躍させよう

焼肉レトロスペクティブとは

Zuziが講師を担当するA-CSM研修で、受講者から新たに生み出された楽しいふりかえりの手法です。

焼肉って、みんなでやると楽しいですよね?焼肉レトロスペクティブはそんな焼肉の楽しい雰囲気を、ふりかえりでもやっちゃおう!という手法なのです。

焼肉レトロスペクティブのやり方

焼肉レトロスペクティブのやり方で、決まってるのは以下だけです。

  1. 焼肉の楽しそうな画像を、ホワイトボードに大きくどーんと貼り出す
  2. ふりかえる期間の出来事を、焼肉に喩えながら付箋に書き出す
  3. 付箋の内容を紹介する

やり方はあえてざっくりにしてあります。

やり方やルールに厳しい焼肉はあまり楽しくないですよね?肉の焼き方や焼く順番は自分の好きにしたいはず。焼肉レトロスペクティブも同様に、出来事を焼肉に喩えるという部分がコアなので決まっていますが、それ以外は実施するチームが好きなように決めてよいです。

 

そんな細かいことよりも、出来事を焼肉に喩える部分の方が大事です。

ここは例えば、「ちょっと今回は肉を注文しすぎちゃったね」といった具合に、焼肉の一場面のように出来事を焼肉に喩えて書きます。これ、「今回はタスク取りすぎて大変だったね」という反省を焼肉に喩えているのです。

ちょっとまどろっこしく感じましたか?しかし、焼肉に喩えることでひねりが入って面白く書くことができ、さらに面白い表現をした人がいると「この表現面白い!どういうことか教えて!」と周囲の興味もひけるわけです。

焼肉レトロスペクティブの狙い

焼肉レトロスペクティブは、出来事や反省を焼肉に喩えて書かなければいけないという縛りがあることで、それらの出来事や反省を面白く伝える効果があります。

例えば、「今回はタスクを積みすぎたために大変だった」たいう付箋の書き方だと、何が起きたのか・それによってどう感じたのかは明確ですが、その当事者は反省しなくてはという責任を感じさせる恐れがあります。

それを焼肉レトロスペクティブでは「肉を注文しすぎてしまった」といったように書くことができますが、このような書き方にすることで周囲の人は「それってどういうことを表しているの?」となります。そうすると、書いた本人は反省以前に周囲に内容を伝える必要があります。つまり、反省よりも楽しく伝えることにより価値を置いているわけです。

そんな意味のわからないふりかえりに効果はあるの?

ふりかえりに厳格な反省とアクションプランを求める場合、焼肉レトロスペクティブは意味不明にも思えるかもしれません。

しかし、ふりかえりを厳格な反省の場にする必要はあるでしょうか?チームも本人も、最大限の力を発揮して、自分たちの至らなかったことはよくわかっているはずです。そこにわざわざ、反省会のようなことをやってもう一度言わせるということにそれほど価値を感じていないのです。

ふりかえりは、一旦立ち止まってある一定期間の出来事を思い出すときです。

そのときに、「反省や次やることを決めなくちゃ」といった切迫感よりも、「この期間、私たちはよくやった!楽しくふりかえろう!」という雰囲気にしたいのです。反省を求められる場と、楽しい場。どちらの方が活発な議論が起きそうでしょうか?

 

そして、焼肉は楽しい!ということです。

日本人なら誰しも好きな焼肉というインタラクティブ・フード・イベント(?)を題材に、みんなで楽しく・頭を捻りながらふりかえってみようよ!というふりかえり手法なのです。

その背景にあるのは「遊び心(Playfulness )」です。

焼肉レトロスペクティブは、チームの遊び心を解放するためのふりかえり手法なのです。

チームの遊び心を解放するとはどういうことか

チームが学習していくには、楽しさや遊び心が必要です。

「仕事なのに?」と思いましたか?ですが、反省を求められる場と楽しく焼肉する場、あなたならどちらで積極的に付箋を書きたいと思いますか?

楽しいことに対して、人はチャレンジしてみようと思えるのです。そこで、まずはこの記事をを読んでいる皆様から遊び心を持ってチームメンバーと接してみましょう。そのときにまずはこの焼肉レトロスペクティブをやってみるというのも良いでしょう。

チームの中で楽しさや遊び心が広まっていくことで、新たなことに取り組むハードルが下がっていきます。失敗しても大丈夫です。なぜなら、その失敗さえも焼肉で楽しく消化できるのです。

そして、チームメンバーは新たなチャレンジに取り組む勇気を獲得し、経験から学習していくのです。チームの遊び心が解放され、チームの学習が飛躍するときです。

焼肉レトロスペクティブを実際にやってみた

A-CSM研修の受講者が後日Discordで集まり、焼肉レトロスペクティブを「A-CSM研修のふりかえり」をテーマにやってみました。

その結果はこちらです。

焼肉レトロスペクティブ

おそらく、ふりかえりの場にいた人以外は、付箋の内容が何を意味しているのか正確には読み取れないでしょう。

しかしそれでいいのです。正確にふりかえりの結果を記録していくことにそれほど意味はありません。ふりかえりに参加していた人が見返して、「あんな会話があったな」というように思い出すために使えればそれでよいのです。

そしてこの焼肉に喩えることの副産物として、参加してない人に内容を正確に読み取ることはできないので公開しやすいというメリットもあります。

今まで、他の会社やチームで行なっているふりかえりの結果を見る機会はそれほど多くなかったと思います。なぜなら、機密情報やセンシティブな情報が含まれていることもあるからです。しかし、焼肉レトロスペクティブは焼肉のことしか書かれていません。そのため、比較的そのまま公開しやすいのです。(もちろん、公開して良いかどうかは参加者の同意が必要ですし、会社ごとのルールに則って判断してください)

 

そして、焼肉レトロスペクティブの後は二次会と称して、ふりかえりのふりかえりも行いました。それがこちらです。

ふりかえりのふりかえり

まず、ふりかえりのふりかえりを「二次会」と称する時点でなかなかの遊び心ですが(笑)、焼肉レトロスペクティブのメリットデメリットが見えてきました。

 

焼肉レトロスペクティブのメリット

  • 終わった後の楽しさ・満足度が高い
  • 楽しいふりかえりの時間はやっぱり良い
  • もっと焼肉に喩えられるようにしたい

焼肉レトロスペクティブのデメリット

  • 焼肉に喩えるために、一発目を出すのがなかなか大変
  • 焼肉に喩えようととしすぎて、手が止まる
  • 焼肉力(?)が必要

 

予想していたことではありますが、やはり出来事を焼肉に喩えるというのは慣れが必要です。ですが、だんだんと慣れてくると焼肉に喩えて捻った付箋を出せるようになりますし、何よりも楽しい!

そして、他の人が書いた付箋で面白い表現があるとつい「これ面白そう!内容教えて!」となります。ふりかえりはつい自分の付箋に視野が狭くなりがちなので、他の人の付箋に視野が広がりやすいというのも焼肉レトロスペクティブの面白いところかなと思いました。

焼肉レトロスペクティブを実践してくれた方の紹介

特に宣伝もやり方の説明もしてないのですが、イノベーターな方々が果敢に焼肉レトロスペクティブを実践してくれています。

koitoさん(KDDIアジャイル開発センター)

piyonakajimaさん(KDDIアジャイル開発センター)

焼肉レトロスペクティブのこれから

まずは焼肉レトロスペクティブをもっと多くの人に知ってもらうべく、Regional Scrum Gathering Tokyo 2024に登壇プロポーザルを提出しました。

RSGTで布教活動をしてこようと思います(笑)

また、並行してもっと実践して焼肉レトロスペクティブそのものを改善していく必要もあるので、自分の現場で実践していこうと思います。

この記事を読んでくれた皆様へのお願い

焼肉レトロスペクティブをやってみませんか?

まだ生まれたばかりのフワフワしたふりかえり手法ではありますが、焼肉レトロスペクティブは楽しいこと間違いなしです!

ぜひ皆様の現場で焼肉レトロスペクティブを実践していただき、その様子をX(twitter)などで投稿していただけると嬉しいです!

この全く新しいふりかえり手法・焼肉レトロスペクティブをみんなで育てていきたいと思っていますので、ぜひぜひ実践していただいてフィードバックし合いながらより良いものにしていけたらと思っています。

書籍「アジャイルメトリクス」を読み始めました

本書の概要

www.shoeisha.co.jp

開発に関わる全工程の詳細を定量化し

より強く、より高パフォーマンスなチームへ

 

【本書の内容】

本書はChristopher W.H.Davis, "Agile Metrics in Action",Manning Publications 2015の邦訳版です。

アジャイル開発は、その特性である「反復」によって、経験に基づく継続的な改善に最適な開発手法です。

この手法に、追跡システム、テストおよびビルドツール、ソース管理、継続的統合、およびプロジェクトライフサイクルといったさまざまなコンセプトとツールを援用することで、製品やプロセス、さらにはチームそのもののパフォーマンス改善できる豊富なデータを入手できます。

本書は、そういった実際に生成されるデータを計測し、結果を的確に分析し、効果的な対処法を指南してくれます。

パフォーマンスや進捗度合いなどを定量化することで、経験値による知見だけではなく、より合意しやすいチームへと組織や方法論を改善してくれることでしょう。

 

【読者が得られること】

・プロセスやタスクを定量化できるようになる

定量化したデータから現状を正確に把握できるようになる

・コミュニケーション、生産性、透明性、士気を向上させる

・客観的にパフォーマンスを測定する

なぜこの本を読もうと思ったか

アジャイルが上手くいっているかどうかをどうやったら測ることができるのか、何かヒントが見つかるかもしれないと思ったためです。 アジャイルなチーム開発が上手くいっているかどうかの物差しは、ざっと以下のようなものが思い浮かびます。

  • PBIを実現していくスピード(ベロシティ)
  • スプリントで実現したタスクの数やその見積り数
  • デプロイの頻度
  • デプロイの待ち時間
  • リリースの頻度

しかし、これらの定量的な指標を運用しているチームはまだそれほど多くないように感じますし、ふりかえり(レトロスペクティブ)の場で定量的な値をもとに原因分析や改善Tryが行われることも少ないように感じます。 ふりかえりの場では、定量的な値を用いて改善策を出しているシーンよりも、定性的な印象・感想をもとに改善策を考えるシーンが多いと感じていたのです。

もちろん、ふりかえりは決まったルールがないので定性的な印象からもっとチームがよくなるアイデアが出てくることは尊いことですし、そこから改善が前に進むことも十分にあり得ます。 しかし、そこに定量的な測定値(メトリクス)が加われば、より効果的な改善点のアタリがつけやすくなるのではないかと期待しているのです。

読書メモと感想

対象の章

第1部 アジャイルチームを測定する

第1章 アジャイルパフォーマンスを測定する

第1部・第1章の読書メモ

  • フィードバックループ(収集・測定・対応・反復)の中でメトリクスを活用することで、コミュニケーションを改善する
  • メトリクスとは、アプリケーションのライフサイクルから得られるデータ
  • アジャイルチームの測定は、立場の違いによって何を良いとするかが異なるので難しい
    • 同じ道を走っていても、良いとする物差し(車のメーター)が異なる
  • 異なる物差しのまま良いかどうかの会話はできない。そのため、同じ物差しで見れるようにデータを変換することでコミュニケーションのギャップを埋める必要がある
    • アジャイルのメトリクスはツールであり、そのツールを用いてコミュニケーションをとることが大事
  • アジャイルメトリクスを理解する上で問題になりやすいポイントがある
    • アジャイルのメトリクス測定の定義は複数の考え方(思想)があり、混乱しやすい
    • アジャイルはプロジェクトではなくプロダクトに集中するので、ガントチャートのようなプロジェクトにフォーカスするツールは不向き
    • データがあちこちに散らばっているので、統一して表示できていない
  • フィードバックループの最初の一歩はデータ収集
    • プロジェクト管理ツール(Jiraなど)からデータ収集
    • ソースコード管理(GitHubなど)からデータ収集
    • ビルドシステム(CI,Jenkinsなど)からデータ収集
    • システムモニタリングからデータ収集
  • フィードバックループの次の一歩はデータの分析
    • 何を分析すべきか(重要なことは何か)を理解するために、マインドマップを利用する
    • データを可視化する
  • 実践しよう!
    • オープンマインドでいること
    • 物事をポジティブに考えること
  • オーナーシップ
    • 賛同を得る
      • データ収集やメトリクス把握は1人で始めることもできるが、理想的にはチームと協力して全員が共通認識を持っているのが望ましい
    • メトリクス否定派
      • 自身の仕事が測定されることに非協力的な人もいる
        • 未知への恐怖、支配者への恐怖、コントロールの欠如などが背景にある
      • ポイントは、自分自身の測定は自分自身で行うべき
        • 外部の人間やシステムから良し悪しを指摘されるべきではない
      • よくある反発
        • そもそも、人は測定"される"のが好きではない
          • 自分がすすんで提供するか、人から測定されるかの違い
        • メトリクスはプライバシーの侵害?
          • ではない。改善の一手法
        • メトリクスがプロセスを重くしている?
          • 逆。メトリクスはプロセスを改善する方法を特定するのに役立つ
          • 手動でメトリクスを作成している場合は、メトリクス収集とレポート作成は自動化したい
        • メトリクスは難しくて時間がかかりすぎる
          • 本書を読もう!

第1部・第1章の感想

  • メトリクスと聞くと堅いイメージがあるが、メトリクスを活用してコミュニケーションを改善してほしいというメッセージが示されているのは意外だった
  • アジャイルチームの測定が難しいのは、立場の違いによって何をよいとするのかが異なるためというのはその通りだなと思う
    • スクラムでいえば、Dev/PO/スクラムマスター/ステークホルダーという立場の違いで、何を良いとするか・そのために何を見たいかが異なってくる
    • そのため、一言に「チームの状況を見えるようにメトリクスの整備をしよう!」と言っても、立場の違いで見たいもの・見えるようにしたい背景が異なるために、一筋縄には進まないことが多い
  • メトリクス否定派に言及しているのが印象的
    • メトリクスと聞くと拒否反応を示す人が少なからずいるのは、日本に限った話ではないのかもしれない
    • メトリクスと聞くと「重厚」「大変そう」「動きが遅くなりそう」というイメージを私は持ってしまうが、本書はメトリクスはプロセスを改善する方法を特定するのに役立つと明言している。

この先を読み進めるのが楽しみです。

RSGT2023から私が感じ取っていたこと

今年も開催されました、RSGT2023。

私が初めてRSGTに参加したのはRSGT2021からです。今回が3回目の参加なのですが、参加したい理由がだんだんと変わってきたような気がします。

1回目は「よくわからないけど有名な人がたくさん集まるみたいだから参加してみよう」、2回目は「登壇したい!」、3回目は「参加者の方々と交流を深めて今年1年の勢いをつけたい」といった感じに変化してきました。

セッションの感想やイベントレポートはたくさんの方々が書いていますので、私はちょっと違った視点から今回のRSGTで感じ取っていたことを書き残しておこうと思います。

RSGT2023から私が感じ取っていたこと

なぜ私はRSGTに参加するのか

  • とても魅力的なセッションが組まれていて、私自身もたくさんのセッションを視聴したのですが、私個人としては「セッション視聴はRSGT参加目的の1/4くらいかもしれない」と思うのです
  • 1番の目的は登壇者や参加者の人と交流すること
    • RSGTのGはギャザリング
    • ギャザリングは集会という意味
    • セッションを見るだけであれば、録画で見ることはできる
    • その場で同じ興味関心がある人たちと場を共有する「ギャザリング」は、参加しないとできない
  • なので、私としてはセッションの視聴も「ギャザリング」のための手段の一つだと思っています

セッションを試聴しながら、同時にギャザリング(集会)しているとはどういうことか?

  • 同じセッションを見にきた人が自分以外にもいるんだ・同じ興味関心がある人がいるんだという一体感
  • セッション中もdiscordで参加者が反応や感想をリアルタイムに投稿するライブ感
  • セッション後は、登壇者と意見交流することも…
  • 参加者同士で「あのセッション見た?どうだった?」と意見交換をする

セッション以外にも、参加者同士で交流(ギャザリング)するための仕組みがたくさん仕込まれているのがRSGT

  • まず、3日間の日程の前日にDay0という形でオンラインで交流するためのイベントが用意されている
    • Day0で交流した方と、その後オンサイトの会場でお会いできた
  • 美味しいランチパックの提供も、美味しいものを食べながらコミュニケーションをとってほしいという運営からのメッセージだと思う
    • アジャイルにも、美味しいご飯やお菓子を囲みながら交流しようというtipsあったよね。確か
  • そして、その最たるもの・結晶がDay3のOSTだと思う

OSTがギャザリングの結晶だと思う理由

  • OSTって何?は良いスライドがあるのでそれを見てほしいのだけど、OSTの議題は参加者が提示して、その議題に興味がある人が自主的に集まって議論する
  • Day1〜2までの間で発表を見たり参加者同士で交流して、自身の中に蓄積された知識や疑問点をアウトプットする時間がDay3のOSTだと思う
    • 故に、OSTは最終日のDay3に設定されているんだと思うんです
  • これって、野中郁次郎先生のSECIモデルに則ってるんじゃないかと勝手に思っています
    1. 登壇を見て、知識を自らの中に落とし込む(内面化、形式知暗黙知
    2. 登壇者や参加者との交流を通じて、知識を共有する(共同化、暗黙知暗黙知
    3. OSTで自らの考えを表明したり付箋に書き出す(表出化、暗黙知形式知
    4. OSTで他の人の意見も聞き、自らの知識と他の人の知識も組み合わせて何かしらの結論を導き出す(連結化、形式知形式知
  • このように見ると、セッションを視聴するだけだとSECIモデルの内面化までしか該当しないので、ちょっともったいない!
  • セッションから得られた知識を新たな知識(自身にとって役に立つ・実践できる知識)に変換するには、SECIモデルの共同化・表出化・連結化まで進め、そしてそれを繰り返し繰り返し回す必要がある
  • RSGTはこのSECIモデルが回るように意図的にイベント設計されてるんじゃないかと、自分は思うんです

https://www.brains-tech.co.jp/wp-content/uploads/2021/10/secimodel.png

そしてDay3のキーノートへ

  • OSTが終わると間髪入れずにDay3のキーノートが始まるのですが、その内容は「参加者の行動を促す」ものになっているのが印象的
  • これもSECIモデルの内面化にループさせるための意図した仕掛けなのではないかと、自分は勝手に思っています
  • RSGTが終わっても学んだことを学びで止めず、自らの現場に持ち帰って実践してもらおう・新たな知識を生み出すSECIモデルのループを回し続けてもらおうというメッセージだと私は思うのです

1年後にまた会おう

  • RSGTが終われば、各々の現場に戻って各々の現実に引き戻されます
    • だけれど、RSGTの場で回した学びのループをその勢いのまま自らの現場で何か試みるのが良いでしょう
  • もしかしたら、現場で知識のループを回し続けるのが難しいと感じたり、ループの勢いが落ちるようなこともあるかもしれません
    • ですが、RSGTで知り合った・交流した仲間がいます。相談できる仲間がいます
    • 1年に一度、そんな仲間たちと交流することで知識ループを再度加速させる。それが私にとってRSGTに毎年参加したくなる理由なのだと思います

そんなこんなで、今回もRSGTの場でたくさんの「勢い」をもらったので、これを糧に2023年も走っていこうと思います。