Regional Scrum Gathering Tokyo & Scrum Fest Advent Calendar 2024
https://adventar.org/calendars/10364
こちらは、12/3の扉(ブログ記事)です。
今回は、なかなか語られることのないスクラムフェスやRSGTのスポンサー、その中でも「スポンサーとして参加する企業は何を考え、何を狙って、どのようにお金の目処をつけてスポンサー参加しているか」について書いてみようと思います。
2024年は、私が所属する会社名義で以下のスポンサーを行いました。これらのスポンサー参加の検討・決定に私は深く関わっていましたので、その過程で考えていたことや経験から得た気づきを共有します。
- スクラムフェス神奈川2024春の陣
- スクラムフェス大阪2024
- スクラムフェス金沢2024
- スクラムフェス仙台2024
- スクラムフェス三河2024
- (Agile Japan 2024)
- (pmconf 2024)
- RSGT2025(開催これから)
注意点としては、スポンサーに参加する企業の狙いは千差万別・視点もさまざまなので、あくまで私のケースとして参考までに読んでもらえたらと思います。
スクラムフェスやRSGTのスポンサーとは
スクラムフェスやRSGTに参加すると、壇上の大型バナーや、登壇者のバーチャル背景に企業ロゴが入っていることに気がつくと思います。あれがスポンサー企業のロゴです。
また、イベントの冒頭でスポンサー企業の紹介があったり、スポンサー企業からのスポンサーセッションや、スポンサーブースが展開されていることもありますね。
スポンサーという字面の通り、スポンサー企業はそのイベントにお金を提供しており、その対価としてロゴ掲載やスポンサーセッションなどの提供を行っています。
スクラムフェスやRSGTでは、開催の数ヶ月前から「開催趣意書」というイベント概要のドキュメントが公開されます。こちらにスポンサー募集の情報も掲載されるので、スポンサーとして参加するか(お金を提供するか)を検討します。
スポンサー企業は開催趣意書のどこを見ているか
まず、スポンサー参加を検討している担当者が、そのイベントに参加したことがあるかどうかで見方が変わります。
参加したことがないイベントの場合は、イベントの趣旨や過去の開催実績、どのような参加者をターゲットにしているかを見ます。
しかし、参加したことのないイベントのスポンサーをするのはなかなかのギャンブルなので、私個人としては過去に参加したことのあるイベントを対象にスポンサーを検討することがほとんどです。
何がギャンブルかというと、スポンサー企業も狙いを持ってスポンサー参加するのですが、その狙っていた効果を得られるかどうかを開催趣意書だけで判断するのはなかなか難しいのです。
スポンサー企業の狙っていることとしては、
- 会社名が何人の目に触れるか
- 会社名が何人に認知されるか
- 会社に良いイメージ(アジャイルやってるんだ!社外コミュニティを積極的に支援してるんだ!といったイメージ)を持ってもらえるか
- 採用エントリー
といったあたりがあると思います。これらを、スポンサー企業としては狙っている人たちに届けたいわけです。
スクラムフェスやRSGTは「アジャイル」や「スクラム」というテーマ性があるわけですが、スポンサー企業としては上記の狙いを届ける相手をもう少し絞り込みたいのです。
そこで大事になってくるのが、そのイベントのテーマ性です。
スクラムフェス三河は「製造業アジャイル」、スクラムフェス神奈川は「リアル対面で心に火を灯す体験」、スクラムフェス新潟は「アジャイルテスト」といったテーマがあります。このテーマがはっきりしていると、「スポンサー企業の狙っている人たちが来るだろう」という予想ができ、スポンサー参加の検討がだいぶやりやすくなります。
また、テーマ性以外でも「そのイベントが行われる地域に本社がある・事業所がある」というのも検討のポイントにはなりそうです。しかし、私としてはテーマ性と地域性のどちらを見ているかというと、テーマ性の方をより重視して見ています。
あと、今回が初開催!というイベントについては開催実績が無いので狙った人たちがイベントに来てくれるか賭けではあるのですが、そこは「初回だから積極的に応援していこう」というスタンスで今年はいくつかスポンサー参加してました。具体的には「スクラムフェス神奈川2024春の陣」と「スクラムフェス金沢」の2つがそれです。
では、完全にギャンブルかというとそんなことはなく。イベントの実行委員によく知っている人がいて信頼できる、初開催でも他の地方イベントやRSGTからイベント運営の知見が共有されており一定の質が期待できる、といった安心感があります。
そして、結論から言うとどちらのイベントもとても良い参加者体験&スポンサー体験でしたので、応援して正解でした。
ここまでをまとめると、スポンサー企業(少なくても弊社の私の場合)としては「狙ったそうな人たちが参加するイベントかどうか」を気にしています。また「ターゲットとしている人たちが集まってくるイベント実績があるか・イベント実績がなくても運営が信頼できる人たちかどうか」を見ているわけです。
上記の判断軸を開催趣意書から拾えることは最低条件ですが、開催趣意書だけで全てとカバーするのも難しい。なのだ、「あの人たちが運営だからきっと大丈夫」という信頼が結構大事なんだと私は思っています。
スポンサープランのどこを見ているか
このイベントは会社としてスポンサーするのに良さそうだなと判断したら、次はスポンサープランを見ます。
イベント会場の壇上バナーで「ゴールドスポンサー」、「シルバースポンサー」、「ロゴスポンサー」といった区別があるのに気がついた方もいると思いますが、スポンサーにもランクがあります。
当然、ランクが高ければスポンサー金額もお高いですし、スポンサーセッションの時間を持てる・スポンサーブースを展開できるといった特典が多く付きます。また、スポンサーにはイベント参加のチケットが配布されることも多いです。
では、1番高いスポンサープランを選択して、1番目立つ&スポンサー特典をたくさんもらうのが良いかというと、私は必ずしもそうとは限らないと考えています。
まずスポンサー金額が、予算の範囲内か・狙っている効果に対して適正な金額かどうかは厳しく見ています。そもそも予算の範囲からはみ出す高額スポンサーは無理なので、その場合は残念ながら検討から除外します。そして予算内であっても、その金額をペイできるだけの効果がありそうかという視点で見ています。(値付けが適正かどうかではなく、自分の会社にとってその金額は有効活用できそうかという視点で見ている)
そしてスポンサー特典ですが、高額スポンサーだとスポンサーセッションやスポンサーブースなどたくさんの特典がもらえるのですが、その企画や準備や当日のスポンサー運営も実はかなりリソースが必要なので、そのリソースの目処がつかないためにスポンサーランクを落とすこともあります。
また、チケットについても「もらったはいいけど無駄にしてしまった」というのは避けたい。金銭的に勿体無いというのもありますが、無駄になったチケットの枚数分だけそのイベントの参加者が減ってしまい、イベントの狙っていた体験に貢献できなかったという後ろめたさもあります。
なので、これは私個人の意見ではありますが、スポンサーに支給するチケット枚数はそんなに多くなくても良いんじゃないかなと思ってます。現地スポンサー運営に必要な最低枚数もらえるとありがたいなという感じで、10枚とかもらっちゃうと無駄にしないように会社内で参加者を探すのが結構大変なのです。
まあ、チケットいっぱいもらってもすぐに会社内で「欲しい!」って人が来てくれたらこんな困り事はないのかもしれませんが(笑)
スポンサー参加決定から入金まで
さて、スポンサーとして参加しようと決めたら申し込むわけですが、この「申し込む」という一言の裏側でもスポンサー企業はけっこういろいろやってます。
ここからはスポンサー企業ごとにまちまちだと思うので弊社のケースとして読んでもらえたらと思うのですが、まず大抵の会社には「予算」というものがあります。この予算と照らし合わせてスポンサー参加ができるかどうか判断します。
弊社の場合、スポンサーにかけられるお金は年間いくらという枠で管理しているので、この枠をいかに活用して最大の効果を出していくか事前に一年分をざっくりと計画しています。
そのため、イベントの開催告知はかなり早い段階で告知されていると助かるわけです。できれば、予算の計画を立てるタイミングより前にわかると助かる。計画はざっくりと枠内で管理しているので、より魅力的なイベントが後から登場した場合は予算を使う対象を差し替えたりもするのですが、やはり事前にわかっていると助かるというのが本音です。
なので、イベント開催を予定している場合は、内容未定が多くてもとりあえず開催予告してくれるとスポンサー検討する会社としては助かります(笑)
そして、スポンサー申し込みをしたらそれではい終わりとはいきません。スポンサー申し込みをしたらスポンサー費の支払い請求書を待つことになります。
イベント申し込みをしたら即請求書を発行してくれることはまずなく、イベントの数ヶ月前に請求書が発行されるのを待つという感じです。
この請求書の処理は会社ごとにルールはいろいろあると思いますが、少なくとも言えることは「請求書は早めにもらえると嬉しい」ことと「請求書の支払い期限は余裕を持って設定されていると嬉しい」ということです。
まず「請求書は早めにもらえると嬉しい」理由ですが、会社の請求書処理フローの処理に時間がかかるケースがあるからです。特に大きい会社では請求書処理フローのステップが多く時間がかかる傾向があります。なので、請求書は早くもらえると嬉しい。請求書処理を早めに始めることができますので。
逆に、イベント開催まで1ヶ月を切って請求書を発行されると大変です。通常の請求書処理フローでは間に合わないため、経理部などにお願いをしてイレギュラー対応してもらうこともあります。弊社特有の事情の可能性もありますが、請求者は早めにもらえると助かります。
そして「請求書の支払い期限は余裕を持って設定されていると嬉しい」についてですが、やはりこれも請求書処理フローのリードタイムに関わる話です。例えば支払い期限が「請求書発行日の月末」となっていると支払いが間に合わないケースがあります。せめて「請求書発行日の翌月末」となっている請求書を月初にもらえると助かる。
1番助かるのは、支払い期限が「イベント開催日の前月末日」となっている場合です。これなら落ち着いて請求書処理を行うことができます。
ひとつ言えることとしては、スポンサー企業は(少なくとも弊社は)スポンサー費用の支払いをできるだけ後にしたいという思惑は無いということです。直前での請求書発行や、あまりにタイトな支払い期限は処理が間に合わない可能性があるのでリスキーと捉えていますが、払うべきものはできるだけ早く支払ってしまってWIPを減らしていきたいという考えで私はやっています。
あとは、請求書の支払いルールは会社の社内ルール以外にも、より効力の強い法律(下請法)も気にしなければいけませんので、会社の経理担当と相談しながら進めることをオススメしておきます。
イベント当日に見ていること
イベント当日にスポンサー企業として見ていることとしては、まずスポンサー紹介が行われているかどうかです。
イベントの冒頭でスポンサーの紹介が行われることが多いのですが、ここでロゴマークの掲示とスポンサープランによっては社名の読み上げが行われます。このスポンサー紹介が効果的に行われているかを実は見てます。社名の読み方を間違えちゃったというのは残念な感じですが、それ以外でも参加者が集まった状態でスポンサー紹介が行われているかを見ていたりします。キーノートセッションの直前にスポンサー紹介をしていると参加者も多いし注目度も高まるので、スポンサー側としても嬉しいですね。
あとは、壇上の大型バナーに掲載された会社ロゴも見てます。大きさはどうか、位置はどうか、など。会社によっては複数種類のロゴを持っていて、「横長のロゴを提出していればよかったかー」とか思うこともあります。
スポンサーブースについては、参加者の動線上にスポンサーブースを置いてくれているかを見てます。やはり離れのようなところにスポンサーブースがあると来てくれる人もまばらになってしまいますので。スポンサーブースを一等地に置く必要もないのですが、エントランスや廊下など参加者が必ず通る場所にあるかは見ています。
そして、1番見ているのはイベントの「雰囲気」です。急に定性的な話ですが、イベントの“場”が開催趣意書で示されていたような特徴・雰囲気・熱量になっているかどうかは、実はスポンサーも結構気にしています。
というのも、スポンサーとしてもそのような“場”に期待してスポンサーをしていますし、金銭以外でもスポンサーセッションで盛り上がるなどしている会社もあります。
スポンサーもイベントの“場”を構成する一部ではあるのですが、最終的にそのイベントが開催趣意書で謳っていたような場になっていたかどうかは、次回のスポンサー継続をするか検討する際に結構重要な要素だと私は考えています。
最後に:イベントスポンサーってどんなスタンスがいいのだろう
ここまで、イベントのスポンサーをする会社の人はどんなことを考えていて、どんな視点で見ているかを書いてきました。
最後に、イベントのスポンサー企業はどんなスタンスでイベントと向き合うべきなのかですが、これは完全に私個人の意見ですが「スポンサーはコミュニティ貢献の手段の一つ」に尽きるなと思っています。
スポンサーをする企業の狙いはさまざまですが、会社がお金を使うときには「目的と理由」が必要です。1番わかりやすいのは採用を目的にスポンサー費を支払うというケースです。
そのため、イベントのスポンサーは人材募集の広報を兼ねていることが多いのですが、私はそれは全然アリだなと思っています。ただ、順序はあると思っています。
私の中では、「スポンサーはコミュニティ貢献の手段の一つ」であり、その貢献の過程でスポンサー企業の魅力が発信され、結果的に人材の応募者が増えたというストーリーが良いだろうなと思うのです。
なので、スポンサーセッションでその会社さんがどれくらいそのイベントを理解してそうか・一緒に盛り上げようとしているかは、結構興味深く観察していたりします(笑)
そして、できれば「コミュニティ貢献」という名目で会社の予算確保もできると素晴らしいのですが、そこはまだまだ難しいというのも現実です。ですが、そこを上手く説明してお金を引っ張ってくることが、スポンサー企業ができるコミュニティに対する最大の貢献なのだと私は考えています。
アジャイルやスクラムは特定の会社が作ったものではなく、コミュニティで生み出されこれまで育まれてきた考え方や手法です。アジャイルやスクラムを活用している会社は、このコミュニティの発展に金銭と人的リソースで貢献することで、まわりまわって自社内のアジャイルやスクラムが上手くいくようになる=コミュニティ支援が事業貢献になる、ということじゃないかなと私は理解しています。
スクラムフェスやRSGTの最高に楽しい・学び深い“場”の形成にぜひスポンサー企業も協力したい!スポンサー企業がそのような“場”の一部として貢献したい!というのが、私が積極的にスクラムフェスやRSGTへのスポンサーを検討するモチベーションだなと思います。
スポンサーとしてのふるまいはまだまだひよっこではあるのですが、引き続きスポンサーとしても、参加者としても、このような素晴らしい“場”を盛り上げていけるようにできる限りの貢献をしていきたい考えです。引き続きよろしくお願いします。