Satoshi Haradaの日記

Satoshi HaradaがAgileに関することを書き残していく日記

焼肉レトロスペクティブ爆誕!遊び心を開放してチームの学習を飛躍させよう

焼肉レトロスペクティブとは

Zuziが講師を担当するA-CSM研修で、受講者から新たに生み出された楽しいふりかえりの手法です。

焼肉って、みんなでやると楽しいですよね?焼肉レトロスペクティブはそんな焼肉の楽しい雰囲気を、ふりかえりでもやっちゃおう!という手法なのです。

焼肉レトロスペクティブのやり方

焼肉レトロスペクティブのやり方で、決まってるのは以下だけです。

  1. 焼肉の楽しそうな画像を、ホワイトボードに大きくどーんと貼り出す
  2. ふりかえる期間の出来事を、焼肉に喩えながら付箋に書き出す
  3. 付箋の内容を紹介する

やり方はあえてざっくりにしてあります。

やり方やルールに厳しい焼肉はあまり楽しくないですよね?肉の焼き方や焼く順番は自分の好きにしたいはず。焼肉レトロスペクティブも同様に、出来事を焼肉に喩えるという部分がコアなので決まっていますが、それ以外は実施するチームが好きなように決めてよいです。

 

そんな細かいことよりも、出来事を焼肉に喩える部分の方が大事です。

ここは例えば、「ちょっと今回は肉を注文しすぎちゃったね」といった具合に、焼肉の一場面のように出来事を焼肉に喩えて書きます。これ、「今回はタスク取りすぎて大変だったね」という反省を焼肉に喩えているのです。

ちょっとまどろっこしく感じましたか?しかし、焼肉に喩えることでひねりが入って面白く書くことができ、さらに面白い表現をした人がいると「この表現面白い!どういうことか教えて!」と周囲の興味もひけるわけです。

焼肉レトロスペクティブの狙い

焼肉レトロスペクティブは、出来事や反省を焼肉に喩えて書かなければいけないという縛りがあることで、それらの出来事や反省を面白く伝える効果があります。

例えば、「今回はタスクを積みすぎたために大変だった」たいう付箋の書き方だと、何が起きたのか・それによってどう感じたのかは明確ですが、その当事者は反省しなくてはという責任を感じさせる恐れがあります。

それを焼肉レトロスペクティブでは「肉を注文しすぎてしまった」といったように書くことができますが、このような書き方にすることで周囲の人は「それってどういうことを表しているの?」となります。そうすると、書いた本人は反省以前に周囲に内容を伝える必要があります。つまり、反省よりも楽しく伝えることにより価値を置いているわけです。

そんな意味のわからないふりかえりに効果はあるの?

ふりかえりに厳格な反省とアクションプランを求める場合、焼肉レトロスペクティブは意味不明にも思えるかもしれません。

しかし、ふりかえりを厳格な反省の場にする必要はあるでしょうか?チームも本人も、最大限の力を発揮して、自分たちの至らなかったことはよくわかっているはずです。そこにわざわざ、反省会のようなことをやってもう一度言わせるということにそれほど価値を感じていないのです。

ふりかえりは、一旦立ち止まってある一定期間の出来事を思い出すときです。

そのときに、「反省や次やることを決めなくちゃ」といった切迫感よりも、「この期間、私たちはよくやった!楽しくふりかえろう!」という雰囲気にしたいのです。反省を求められる場と、楽しい場。どちらの方が活発な議論が起きそうでしょうか?

 

そして、焼肉は楽しい!ということです。

日本人なら誰しも好きな焼肉というインタラクティブ・フード・イベント(?)を題材に、みんなで楽しく・頭を捻りながらふりかえってみようよ!というふりかえり手法なのです。

その背景にあるのは「遊び心(Playfulness )」です。

焼肉レトロスペクティブは、チームの遊び心を解放するためのふりかえり手法なのです。

チームの遊び心を解放するとはどういうことか

チームが学習していくには、楽しさや遊び心が必要です。

「仕事なのに?」と思いましたか?ですが、反省を求められる場と楽しく焼肉する場、あなたならどちらで積極的に付箋を書きたいと思いますか?

楽しいことに対して、人はチャレンジしてみようと思えるのです。そこで、まずはこの記事をを読んでいる皆様から遊び心を持ってチームメンバーと接してみましょう。そのときにまずはこの焼肉レトロスペクティブをやってみるというのも良いでしょう。

チームの中で楽しさや遊び心が広まっていくことで、新たなことに取り組むハードルが下がっていきます。失敗しても大丈夫です。なぜなら、その失敗さえも焼肉で楽しく消化できるのです。

そして、チームメンバーは新たなチャレンジに取り組む勇気を獲得し、経験から学習していくのです。チームの遊び心が解放され、チームの学習が飛躍するときです。

焼肉レトロスペクティブを実際にやってみた

A-CSM研修の受講者が後日Discordで集まり、焼肉レトロスペクティブを「A-CSM研修のふりかえり」をテーマにやってみました。

その結果はこちらです。

焼肉レトロスペクティブ

おそらく、ふりかえりの場にいた人以外は、付箋の内容が何を意味しているのか正確には読み取れないでしょう。

しかしそれでいいのです。正確にふりかえりの結果を記録していくことにそれほど意味はありません。ふりかえりに参加していた人が見返して、「あんな会話があったな」というように思い出すために使えればそれでよいのです。

そしてこの焼肉に喩えることの副産物として、参加してない人に内容を正確に読み取ることはできないので公開しやすいというメリットもあります。

今まで、他の会社やチームで行なっているふりかえりの結果を見る機会はそれほど多くなかったと思います。なぜなら、機密情報やセンシティブな情報が含まれていることもあるからです。しかし、焼肉レトロスペクティブは焼肉のことしか書かれていません。そのため、比較的そのまま公開しやすいのです。(もちろん、公開して良いかどうかは参加者の同意が必要ですし、会社ごとのルールに則って判断してください)

 

そして、焼肉レトロスペクティブの後は二次会と称して、ふりかえりのふりかえりも行いました。それがこちらです。

ふりかえりのふりかえり

まず、ふりかえりのふりかえりを「二次会」と称する時点でなかなかの遊び心ですが(笑)、焼肉レトロスペクティブのメリットデメリットが見えてきました。

 

焼肉レトロスペクティブのメリット

  • 終わった後の楽しさ・満足度が高い
  • 楽しいふりかえりの時間はやっぱり良い
  • もっと焼肉に喩えられるようにしたい

焼肉レトロスペクティブのデメリット

  • 焼肉に喩えるために、一発目を出すのがなかなか大変
  • 焼肉に喩えようととしすぎて、手が止まる
  • 焼肉力(?)が必要

 

予想していたことではありますが、やはり出来事を焼肉に喩えるというのは慣れが必要です。ですが、だんだんと慣れてくると焼肉に喩えて捻った付箋を出せるようになりますし、何よりも楽しい!

そして、他の人が書いた付箋で面白い表現があるとつい「これ面白そう!内容教えて!」となります。ふりかえりはつい自分の付箋に視野が狭くなりがちなので、他の人の付箋に視野が広がりやすいというのも焼肉レトロスペクティブの面白いところかなと思いました。

焼肉レトロスペクティブを実践してくれた方の紹介

特に宣伝もやり方の説明もしてないのですが、イノベーターな方々が果敢に焼肉レトロスペクティブを実践してくれています。

koitoさん(KDDIアジャイル開発センター)

piyonakajimaさん(KDDIアジャイル開発センター)

焼肉レトロスペクティブのこれから

まずは焼肉レトロスペクティブをもっと多くの人に知ってもらうべく、Regional Scrum Gathering Tokyo 2024に登壇プロポーザルを提出しました。

RSGTで布教活動をしてこようと思います(笑)

また、並行してもっと実践して焼肉レトロスペクティブそのものを改善していく必要もあるので、自分の現場で実践していこうと思います。

この記事を読んでくれた皆様へのお願い

焼肉レトロスペクティブをやってみませんか?

まだ生まれたばかりのフワフワしたふりかえり手法ではありますが、焼肉レトロスペクティブは楽しいこと間違いなしです!

ぜひ皆様の現場で焼肉レトロスペクティブを実践していただき、その様子をX(twitter)などで投稿していただけると嬉しいです!

この全く新しいふりかえり手法・焼肉レトロスペクティブをみんなで育てていきたいと思っていますので、ぜひぜひ実践していただいてフィードバックし合いながらより良いものにしていけたらと思っています。